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A、T、G、Cの四種の塩基で書かれている遺伝情報は、DNA分子の片方の鎖の上の塩基の並び方によって書き示されており、他方の鎖は読み取られていない
読まれていない方の鎖は、いわば、裏打ちとなって、遺伝子が親から子へ、細胞から細胞へと、安定に、かつ、間違いなく、伝えられるために大切な働きをしている
遺伝子の上の情報がどのようなタンパク質を支配しているかを調べる
ここでは、A、T、G、Cの四文字から三文字を使った順列が20種類のアミノ酸のそれぞれに符合したコードとなっている
遺伝子DNAの上では、こうしたコードが数百から数千個連なっており、塩基の長い配列を作っている
遺伝情報は、塩基という文字でDNA分子のテープの上に書かれ、保存されていて、必要に応じてその情報が取り出されて、タンパク質が合成される
現在では、コード表をコンピュフターに入れておくと、DNAの塩基配列はたちどころにタンパク質のアミノ酸配列に変換される
しかも、このコード表は、バクテリアなどの下等な生物から、高等植物、哺乳類、ヒトに至る高等動物まで、稀な例外を除いて、すべての生物に共通な「コトバ」として使われている
ガンは遺伝子の変化で起こるヒトや動物にガンを起こすものとして、「放射線」、「発ガン物質」、そして「ガンウイルス」の三つがあることはよくご存じであろう
放射線や発ガン物質の作用を考えてみょう
放射線といっても、X線、紫外線、カンマ線といろいろある
また、数万種類の化学物質が発ガン作用をもつといわれている
これらの因子は、細胞を構成している核酸、タンパク質など、さまざまな生体物質に有害な影響を与え、しかも、その影響の仕方は、個の因子によって、いろいろである
しかし、いずれも遺伝子に傷をつけ、突然変異を起こすことが知られている
遺伝子DNAにX線を照射すると、塩基が破壊されたり、デオキシリボース糖とリッ酸基の間の結合が壊れて、DNA鎖の切断が起こる
細胞の核の中にはDNA鎖の切れ目を修復する働きがあって、ほとんどの切れ目は正しく直されてしまう
このとき、塩基の配列順が誤って直され、もと通りにいかず変わってしまうと、遺伝子の情報がこわれ、突然変異がひき起こされる
紫外線の場合には、DNA鎖の上でチミンどうしが異常結合をおこす
異常結合した部分は切り取られて修復されるが
このときも正しく直せないと突然変異が起こる
タールや煤煙に含まれているベンツピレンという強力な発ガン物質は、DNAのアデュンとグアニンに結合する
結合した部分は、新しいDNA鎖が合成されるとき邪魔になって、その部分が飛ばされて合成されたり、違う塩基がはいりこんだりして、やはり突然変異が起こる
発ガン因子がDNAに作用するメカニズムはこのようにさまざまだが、突然変異を起こすことが共通の特徴となっているようだ
とすれば、細胞の中のある遺伝子が突然変異を起こすことと細胞のガン化とは深い関係があると考えるのが自然だろう
一方、ある遺伝子が働くとガン細胞が生まれるという考え方は、こうしたガンの原因の探索とは別に、ガンを起こすウイルス、「ガンウイルス」の研究から生まれ決定的なものとなってきた
最初に見つけられたガンウイルスは、発見者の名前をとって、ラウス肉腫ウイルスと呼ばれている
これはニワトリに肉腫を起こすウイルスで、一九一一年に発見された
ウイルスはビールスとも呼ばれ、微生物の一種であり遺伝子をもっている
ウイルスの遺伝子は、ウイルスの種類によって、DNAからなるものの他に、RNA(リボ核酸)のものがあり、現在では、どちらにも多数のガンウイルスが見つかっている
ウイルスは、遺伝子のDNAやRNAがタンパク質の殻で包まれた粒子である
細胞かウイルスに感染する、つまり、ウイルス粒子が細胞に入り込み、ウイルスの殻が破られると、ウイルスの遺伝子が働き出す
そうすると、子ウイルスが増殖したり、細胞をガン化する
ウイルス粒子は「遺伝子の缶詰」のようなものだ
この缶詰の中に細胞をガン化する働きをもつものがあるとすれば、それは、ガンを起こす遺伝子、「ガン遺伝子」であるということになる
実際、一九七六年、C大学のJ.Vの研究室にフランスから共同研究に来ていたD.Sは、ラウス肉腫ウイルスから(肉腫を起こす働きを砥)ガン遺伝子」を初めて取り出したのである
このように、共同研究は、ときにすばらしい発見をもたらし、新しい研究の展開を切り開く
研究の現場では、その研究室なりの考え方、実験方法があって、そのラインの上で研究が進められ、どんなすばらしい研究室でも、ある時期、研究が足踏み状態に陥ることがある
こうした時に、まったく違うバックグラウンドをもった研究者同士が共同研究を始めると、新しいアイディアや研究方法が相互に導入され、すばらしい研究が生まれる
この場合も、研究室のラウス肉腫ウイルスに関する長い研究の蓄積の上に、ステーリンのフランス人気質の進取なアイディアが開花したのであろう
日本でも近頃、共同研究が盛んであるが、技術開発では優れた成果が上げられているのに、基礎生物学では共同研究が下手である
これには日本人の気質や社会の因習、それに、大学中研究者の組織機構に原因がある
それは、ときに、若い研究者が外国ですばらしい研究成果を上げることからもわかる
ただこうした優秀な若い研究者も、日本へ帰って来ると、まるで別人のように、平凡な、無能とさえ見える研究者になってしまうことが多い
日本では、複数の人間が集まると、年齢と社会的な地位から、必ず、主・従の関係が生まれ、それがすべてに優先してしまう
そこでは、馬車馬のように働くことや実験の腕に対する評価はされても、若い優れた研究者の個性や独創性は押さえつけられてしまう
やはり、ある種のウイルスはガン遺伝子をもっていて、細胞がウイルスに感染すると、ウイルス遺伝子とともにこのガン遺伝子が細胞の中に送り込まれて働き出し、細胞がガン化する
つまり、ガン細胞は、外からガン遺伝子を与えられることにより、遺伝的性質が変化したのである
ガンウイルスは、ガンを起こす遺伝子の「運び屋」であったのだ
現在ではニワトリやマウスその他の動物に多数のガンウイルスが発見されている
それぞれのガンウイルスからガン遺伝子が見つけられ、20種類以上の異なるガン遺伝子があることが明らかにされている
同じガン遺伝子が複数の違うガンウイルスに見いたされることもある
そして、細胞がガンウイルスに感染すると、ガン遺伝子が送り込まれ
ガン化する
これは、確かに実験で証明された事実となっている
ヒトでも、ガンウイルスがガンの原因となっているかどうか調べられたのはいうまでもない
けれども、一つの特殊な例外を除いて、これが「ヒトのガンの真犯人だ」と呼べるガンウイルスが、どうしても見つかっていない
実験に使う動物では、ガンウイルスが原因となっている場合がしばしば認められるのに、ヒトでは、ウイルスはガンの主な原因と考えられていない
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遺伝子DNAの上では、こうしたコードが数百から数千個連なっており、塩基の長い配列を作っている
遺伝情報は、塩基という文字でDNA分子のテープの上に書かれ、保存されていて、必要に応じてその情報が取り出されて、タンパク質が合成される
現在では、コード表をコンピュフターに入れておくと、DNAの塩基配列はたちどころにタンパク質のアミノ酸配列に変換される
しかも、このコード表は、バクテリアなどの下等な生物から、高等植物、哺乳類、ヒトに至る高等動物まで、稀な例外を除いて、すべての生物に共通な「コトバ」として使われている
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これらの因子は、細胞を構成している核酸、タンパク質など、さまざまな生体物質に有害な影響を与え、しかも、その影響の仕方は、個の因子によって、いろいろである
しかし、いずれも遺伝子に傷をつけ、突然変異を起こすことが知られている
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結合した部分は、新しいDNA鎖が合成されるとき邪魔になって、その部分が飛ばされて合成されたり、違う塩基がはいりこんだりして、やはり突然変異が起こる
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一方、ある遺伝子が働くとガン細胞が生まれるという考え方は、こうしたガンの原因の探索とは別に、ガンを起こすウイルス、「ガンウイルス」の研究から生まれ決定的なものとなってきた
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これはニワトリに肉腫を起こすウイルスで、一九一一年に発見された
ウイルスはビールスとも呼ばれ、微生物の一種であり遺伝子をもっている
ウイルスの遺伝子は、ウイルスの種類によって、DNAからなるものの他に、RNA(リボ核酸)のものがあり、現在では、どちらにも多数のガンウイルスが見つかっている
ウイルスは、遺伝子のDNAやRNAがタンパク質の殻で包まれた粒子である
細胞かウイルスに感染する、つまり、ウイルス粒子が細胞に入り込み、ウイルスの殻が破られると、ウイルスの遺伝子が働き出す
そうすると、子ウイルスが増殖したり、細胞をガン化する
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つまり、ガン細胞は、外からガン遺伝子を与えられることにより、遺伝的性質が変化したのである
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